近年、エンターテインメントとしてのマンガは、教育の観点からも、しっかりとした取材、時代考証に基づき作られており、新しい学びの場を提供しています。その中でも人気を博すキングダムは、中国の春秋戦国時代を舞台にした壮大な歴史物語で、多くの読者を魅了しています。
キングダムは、物語が描く登場人物たちの成長や葛藤、戦闘の戦術などから、「リーダーシップ」や「組織づくり」、「人材育成」や「戦略立案」など、ビジネスの実践に役立つと、多くの社会人から支持を集めている作品ですが、学生が社会科を学ぶ上でも、勉強面で役立ったと実感が得られるマンガとして、現役東大生が選ぶ勉強に役立つマンガ1位に挙げられたことがあるほどです。
そんなキングダムの魅力を今回はご紹介します。
キングダムとは?
キングダムを知らない方のために、キングダムのことを少しご紹介します。
著者について
著者は原泰久さん。1975年、佐賀県生まれです。彼は大学院を卒業後、社会人としてSEを経験しました。漫画家としてデビューするためのつなぎとして仕方のない就職でしたが、いざ企業に入ってみると、皆同じことをしているのではなくそれぞれに役割があり、やる時は真剣に必死で取り組んでいたのがとても面白かったそうです。そこでの経験が、泥臭く汗をかいて仕事をする人間を描くことができ、マンガに厚みを与えているかもしれない、と原さんのインタビュー記事にもあります。
学生の目から見ると、会社では皆同じようなことをしているように見えていたのですが、実際の現場は、チームごとにそれぞれ役割があり、有機的に動いている。『キングダム』でいえば「伍」ですね。それがいくつもあり、そのなかで戦ったり、リーダーたちが上長とけんかしたり、一人ひとりがアグレッシブに動いている。ドラマチックだと思いました。
(「キングダムは会社員経験そのもの」 作者・原泰久氏/2019 / 3 / 28/NIKKEIリスキリングより)
漫画家としてデビュー以降、連載はキングダムが初です。
2006年にヤングジャンプ(集英社)で連載開始以降、現在も連載が続いており、コミックスの最新刊は73巻。2024年12月18日には74巻が発売される予定です。
2013年に第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞、2023年には累計発行部数1億部を突破している、超超超大人気マンガです。
物語の魅力とテーマ
キングダム31巻表紙/原泰久/集英社
キングダムは、古代中国の春秋戦国時代という混乱の時代を舞台にした壮大な物語で、史実を基にしたフィクションです。この物語は、後に偉大な支配者となる秦の始皇帝、嬴政(えいせい)と、彼の志に共鳴する若者、信(しん)の友情と成長の物語を描いています。彼らは戦乱に満ちた時代を生き抜き、中華統一という壮大な目標に向かって突き進みます。戦争やその背後にある緻密な政治的駆け引き、さらに個々のキャラクターの心の変化と絆が、物語に深みを与えています。異なる文化と価値観を持つ国々を一つにまとめるというテーマは、現代社会における多様性や国際理解の重要性ともリンクし(まさに社会科で学ぶべきポイントそのもの!)、多くの人々に深い示唆を与えています。
さまざまなメディア展開
キングダムは漫画としての成功をさらに広げ、アニメ化や映画化、さらにはゲーム化といった多様なメディア展開を果たしています。2006年に始まったアニメは、その後も複数のシーズンが制作され、多くのファンを魅了し続けています。それに加え、映画版も出され、成功を収めたことで続編が制作されています。これらのメディア展開は、キングダムが幅広い年齢層に愛される一因となっています。このようにして、キングダムは単なる物語を超え、一つの文化的な現象となりつつあります。
集英社内には人気作品『ドラゴンボール』の映像化や商品化の監修や契約を専門的に行う組織として「ドラゴンボール室」という部署がありますが、これから「キングダム室」が立ち上がる日もあるかもしれません。
世界における大国「中国」と、中国の最初の覇者「秦」の世界史における影響
中国まるごと百科事典/ http://www.allchinainfo.com/ より
マンガ「キングダム」は、古代から現在に至るまで世界に影響を与え続けている巨人、中国を描いています。物語の中心となる「秦」という国家は、中国史上初めての統一国家であり、その成立は世界史においても大変重要な意味を持ちます。秦の統一は、長きにわたる戦乱状態にあった春秋戦国時代を終わらせ、散り散りになっていた中国全土を一つにまとめる画期的な出来事でした。
紀元前221年、始皇帝が掲げた壮大なビジョンの下、中央集権体制が築かれます。秦は、郡県制の採用や度量衡、貨幣、文字の統一を断行しました。この一連の制度改革は、異なる地域や文化を持つ諸国を包括し、彼らが協調して一つの国を形成する上での重要な礎となりました。
秦はその後わずか15年で滅んでしまいますが、こうして根付いた統治の枠組みは、次の時代の漢が400年続いたことを含め、他の国々の国家運営にも多大な影響を与え、現代に至るまで引き継がれています。
キングダムは、歴史を単に過去の出来事として捉えるのではなく、それを通して現代社会に直結する知識を学ぶためにとても良い教材です。戦国の世で中国がどのように統一されていったのか、そしてそれが現代において日本を含む世界各国にどのような形で影響を与えているのかを読み解くことができます。社会科においても、まさにそこを学ぶポイントとして「秦と漢」という項目が文部科学省の学習指導要領では取り上げられています。
キングダムに学ぶ現代社会への教訓
キングダム50巻表紙/原泰久/集英社
作中に登場する人物たちが経験するリーダーシップや組織運営、戦略立案などの課題は、現代のビジネスシーンにも直結する学びも提供します。それぞれのキャラクターが抱える責任や挑戦は、歴史を超えた普遍的なテーマを提示しており、読者にとっては現実の生活にも応用できる示唆に富んでいます。
このように、キングダムは単なる娯楽作品としてではなく、歴史に対する興味を引き出し、より深い理解を促進するための重要なツールと言えます。
社会科の学びの中で、歴史を生き生きとしたものとして捉え直し、理解を豊かにする助けとなることでしょう。教科書や資料集に目を通すだけでは理解が難しいその時代の文化や空気感も、マンガを読み進めるうちに理解できます。(あくまでフィクションですので、これが正しい、ではなく、この時代の資料からは逸脱していない、という程度でお考えください。)
どんな人におすすめ?
キングダム66巻表紙/原泰久/集英社
このように非常に多くの人を魅了するマンガであるキングダムは、どんな人におすすめでしょうか?
- 歴史に興味のある人
- 戦略に興味のある人
- 政治に興味のある人
のほか、以下のような幅広い方々におすすめです。
- 戦略やリーダーシップを学びたい人
- すべてのビジネスパーソン
- 自己成長を望む人
- 社会科を教える先生
- 社会科を学ぶ小中高生
家族文庫として居間に置いておくも良いでしょう。キングダムのエピソードをきっかけに、家族の会話が弾むこともあるでしょう。
(ちなみに我が家では楽天セールで買い物をする時に、1000円以上で送料無料の楽天ブックスで2冊ずつ買い、ポイントアップを稼ぎつつ家族文庫として増やしています。)
キングダムの魅力、いかがでしたでしょうか?まだ読まれていない方はぜひ一度手に取って見てください!
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