キングジム:革新的なファイルメーカーの独自の視点から次々と生み出される画期的な商品

時代に適応し、変化・革新を続ける会社。
キングジムは、オフィス用品メーカーであり、その実用的かつ革新的な製品と高い品質からファンも多く存在しています。特に「キングファイル」、「テプラ」などは、日常のオフィス業務で大いに使われており、多くのビジネスシーンのみならず家庭などの生活に密着した場面にも活躍の場を広げています。本記事では、株式会社キングジムについて、有価証券報告書を軸に、主要な製品や今後の展望について解説します。キングジムの製品がどのようにビジネスの景色を変える可能性があるのか、お楽しみいただければと思います。

目次

なぜ、キングジムなのか?

著者 原泰久氏の集英社出版の漫画キングダム1巻の表紙
キングダム1巻表紙/原泰久/集英社

今回の企業紹介は、マンガ「キングダム」からの発想をベースにお届けします。
キングダムを軸に関連する有価証券報告書を探してみたのですが、見つからず・・・。
キングダム・・・集英社・・・、上場していない。
キングダム・・・中国・・・歴史、国土・・、広すぎる・・、初心者には難しすぎる。
キングダム・・・キングダム・・・キングダム・・キングジム?これだ!
1字違いで、自分の好きな文房具を扱っている有名メーカーがあった‼︎
ということで、早速、当初の予定からちょっとズレた視点から、有価証券報告書の分析をお届けします。

キングジム – 革新的なファイルメーカー

キングジムは、オフィス・文房具用品の分野で長きにわたり革新的な製品を提供し続けているファイルメーカーです。その製品は、デザイン性と実用性を兼ね備え、あっと驚くようなユニークな視点からユーザーのニーズに応え、多くのファンを抱えています。

その創業は、1927年(昭和2年)、創業者である宮本英太郎氏が名鑑堂の屋号で人名簿、印鑑簿を考案、製造、販売したことに遡ります。この人名簿、印鑑簿は、アルバム式でファイリング可能なものであったそうです。創業時から、「革新的」なアイデアにあふれた「ファイル」が売りだったんですね。創業から数えるともうすぐ100周年(会社の設立からは76年)になろうとしていますが、現在にも息づく製品のスピリットを感じます。

株式会社キングジムの基礎データ

キングジムの基礎データは以下のようになっています。

株式会社キングジム
代表者名代表取締役社長 木村 美代子
決算時期6月
本社所在地東京都千代田区東神田二丁目10番18号
その他事業所札幌営業所、仙台営業所、東京支店、名古屋支店、大阪支店、広島営業所、福岡支店、松戸事業所
国内グループ会社株式会社ラドンナ https://ladonna-co.net/
株式会社アスカ商会 https://www.asca-1971.co.jp
株式会社ぼん家具 https://www.bonkagu.co.jp/
ウインセス株式会社 https://www.wincess.co.jp/
ライフオンプロダクツ株式会社 https://lifeonproducts.co.jp/
設立創業1927年4月、会社としての設立は1948年8月
資本金19億7869万円
売上高395億5306万円
社員数1,822名(うち株式会社キングジム自体の社員は372名)
平均年齢41.3歳
企業理念独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する
主な事業内容文具事務用品事業、インテリアライフスタイル事業
ビジネスモデルかつては卸売が主流。現在は、ライフスタイル事業の展開、EC販売の強化
強み新しい発想を大切にし、市場にイノベーションを起こす。これによるファンも多い。
弱みペーパーレス化によるファイルの需要減。その他の文具用品も縮小傾向

社長の木村美代子氏は2024年9月からの就任で、それ以前は創業家の宮本氏が4代社長を務めていました。

業界トップシェアを誇る – キングファイル

株式会社キングジムHPより

キングジムと言えば、まずは業界トップシェア70%を謳っているパイプ式ファイル「キングファイル」でしょう。
左右どちらからも、とじ具の開閉が可能で書類の抜き差しが簡単。書類収納だけでなく、商品サンプルなどの見本帳ファイルとしても使用可能です。表紙芯材に古紙パルプ100%使用し、環境に配慮した仕様となっており、多くの企業や官公庁で使用される日本のオフィスの定番ファイルとしての地位を築いています。

キングジムの「ファイル」は、創業時の人名簿、印鑑簿から脈々と受け継がれてきた主力商品です。それまでに使われていた手書きの帳面では、分類や順番の変更がしにくい、といった不満を解消し、切り抜いて差し込むスタイルを考案。当時とても画期的な商品だったことは想像に難くありません。

それから時が流れ、紙製や布貼り表紙が一般的であったファイルでしたが、自動車メーカーの現場からの「手についた油でファイルが汚れてしまう」という声に耳を傾けて出来たのが背表紙にカバーを付け、ビニールペーパー仕上げの表紙で作られた「キングファイル」。1964年の発売以来、オフィスで活躍し続けている一品です。

キングファイルは、発売から60年の歴史の中でほとんどデザインを変えていないのもポイントで、古い「キングファイル」と新しい「キングファイル」を並べても統一感が崩れないのが魅力の一つと言われています。この統一感に一役買っているのが、背表紙にデザインされたカラフルなスクエアマーク。この色で系統を分類・区別している会社も多いようです。このデザインと、どこからも入れ替え可能などの機能性が評価され、キングファイルはグッド・デザイン賞を受賞しています。
一方で、実は細かな部分は常に進化しており、1975年からは両開きタイプのとじ具を採用、1998年からはとじ具と表紙が脱着できるタイプを発売と、「常に同じ。でも静かに進化」を続けている製品です。ファンの心をくすぐりますね。

https://www.kingjim.co.jp/products/series/kingfile

ラベルライターと言えば「テプラ」

テプラ
株式会社キングジムHPより

キングファイルがオフィスの現場に浸透していった結果、新たな需要が現場に生まれます。それは、「ファイルの背表紙に綺麗な文字で表示したい」というもの。当時そのような需要に各現場では、背表紙にワープロで「文字を打ち」、「プリント」して、「切って」、「貼る」という作業で対応していました。OA化の波が押し寄せつつありファイルだけでは立ち行かない、と考えていたキングジムは、その需要を受け「テプラ」を開発しました。OA機器を取り扱ったことのない会社には、その開発は苦難の連続だったようです。

苦労したかいもあり、発売後、テプラは、会社だけでなく家庭にも普及の広がりを見せます。また、ファイルの背表紙だけでなく、機器の操作案内や公共表示、ビデオテープのタイトル表示など、使う人の自由な発想により、さらに様々な用途へと使用の幅を広げていきました。このあたりはまるで現在のLEGOの躍進をLEGOファンの作り出した作品コミュニティが支えているのと同じ匂いを感じます。

現在のテプラは、PCやスマホと連携してさらに使いやすい機器へと進化を遂げています。

https://www.kingjim.co.jp/products/tepra

キングジムは文房具メーカーにあらず

いえ、一般的なビジネスの分類では、文房具メーカー、オフィス用品メーカーというくくりにはなるとは思います。えぇ、分かってます。
しかし、キングジムファンにとっては文房具というくくりじゃないんです。そこからはみ出しているところも魅力なんです。
現在の主力商品から考えると、キングジムは「情報整理用品」メーカーです。文房具から少しはみ出している。そして生活用品に少し足を突っ込んでいる、という感じですね。その辺、あえてやっている自覚があるようで、有価証券報告書ほかでも、グループ会社を含めた運営の中でライフスタイル事業の強化を掲げています。
ということで、「キングファイル」、「テプラ」以外の情報整理用品についてもいくつかご紹介します。

ジリッツ

ジリッツ
株式会社キングジムHPより

見開きで自立するファイル。今までありそうでなかったアイデア商品。ジワジワ人気が来そうな気がします。
https://www.kingjim.co.jp/sp/jilitz

カキコ

カキコ
株式会社キングジムHPより

これも画期的。書き込む前提で書類を閉じる商品です。私の周りでは、楽譜ファイルとして使う人が多数です。意外に閉じたまま書き込む作業というのは探せばありそうなシチュエーションだと思います。ビジネスの現場は「自分の机に向かって」だけではない、というのが面白い視点ですよね。
https://www.kingjim.co.jp/sp/kakiko

ポメラ

ポメラ
株式会社キングジムHPより

パッと思いついた内容を入力することに特化した「ポ」ケット「メ」モ「ラ」イター。文章作成ツールです。ノートPCより小型で、フタを開くとすぐに入力がで始められるため、作家さんなどに人気の商品です。博多大吉さんが愛用していることでも有名ですね。https://www.kingjim.co.jp/pomera/dm250

博多大吉さんのnote「新型ポメラのここが凄い!ランキング」https://note.com/hakatadaikichi/n/nb3aa04adc8bb

防災セット

防災セット
株式会社キングジムHPより

こちらの防災セットはA4サイズのファイルと同じ高さの箱型となっているため、ファイルと同じ場所に収納ができます。ファイルが主力のキングジムらしい商品ですね。地球温暖化が進み、ゲリラ豪雨等、ますます災害的な気象が増加することが予想される中、キングジムの防災セットで今後の災害に備えてみてはいかがでしょうか?
https://www.kingjim.co.jp/sp/saigai_taisaku

ファブラブ

ファブラブ
株式会社キングジムHPより

推し活で集めたコレクションを可愛くデコりながら収納するバインダー。「推し活」は人気が出たら面白いバリエーションが出てくる気配を感じます。https://www.kingjim.co.jp/sp/favluv

フラッティ
株式会社キングジムHPより

推し活に注目するきっかけの一つはフラッティにアクリルスタンドを収納しているユーザーの活用方法だったとのこと。こういう使い方の広がりがキングジムらしさですね。
https://www.kingjim.co.jp/sp/flatty

目のつけどころが違う – その他の人気商品

これまでにご紹介した商品以外にも様々な人気商品があります。

テッテ

テッテ
株式会社キングジムHPより

コロナ禍中は手指消毒が励行されたため、ステーショナリー部門に代わりキングジムの売上を助けた自動手指消毒器です。角のないフォルムがいいですね。https://www.kingjim.co.jp/sp/tette

ルラップ

ルラップ
株式会社キングジムHPより

試験対策に、ラップ時間と総合時間を計測できる学習タイマー。スマホで管理すると、ついつい別の誘惑に負けてしまう人も多いと思いますので、そういう方におすすめの商品。普通のタイマーだと1つの時間しか計れないものも多いので、大問のラップ時間と総合の時間を計測できるのは便利です。
https://www.kingjim.co.jp/sp/lelap

ビジュアルバータイマー
株式会社キングジムHPより

こちらも面白い商品です。もっと色が見やすいとよりいいのかも?目盛りで残り時間を可視化するタイマー、「ビジュアルバータイマー」。
https://www.kingjim.co.jp/sp/vbt10

ホルポ

ホルポ
株式会社キングジムHPより

外出中にゴミ箱がなくて困った経験はありませんか?ゴミ袋を持ち歩けばいい話なんだけど、ついつい持って歩くのを忘れちゃうんだよね、という方におすすめなのが、このホルポです。見た目がバッグなので、入れっぱなしでも違和感なし。バッグインバッグ的な感覚で、持ち歩きいただけます。名前の由来は見つけられていませんが、「ポイっと放れる」という意味なのかな、と思います。
https://www.kingjim.co.jp/sp/horupo

HITOTOKI

ひととき 氷印
株式会社キングジムHPより

日々を楽しむ文房具のシリーズです。最新の第76期有価証券報告書にもスタイル文具としてHITOTOKIの展開が紹介されており、キングジムでは今後力を入れたいと考えているブランドであることが窺えます。現在の木村美代子社長はアスクル株式会社から移籍し、キングジム取締役常務執行役員を経て社長に就任しています。アスクルは、キングジムの有価証券報告書によると、エコール流通グループと並び売上の13%程度を占める取引先であり、同時に、LOHACOというビジネス女性をターゲットにした日用品等を通販で扱う事業ブランドも展開しています。このあたりに木村社長のHITOTOKIへの思い入れがあるように感じられます。
HITOTOKIでは、「氷印」シリーズが涼しげで可愛らしいです。https://www.kingjim.co.jp/hitotoki/product


この辺りまで見ていくと、「オジサンの多いビジネスの現場」から「女性目線の日常生活」に徐々に販売の場をシフトしつつあるように感じます。若い男性に注目した商品が少ないように思いますが、吉と出るか、凶と出るか・・・。キングジムファンとしては、何はともあれ、これからもワクワクする商品を生み出していってほしいです。

文房具業界の概況

これまで、キングジムの基本情報、売れ筋商品を見ていきましたが、キングジムの位置する文房具業界についても目を移してみましょう。

文房具業界は主に、総合型のメーカー(KOKUYO、PLUSなど)のほか、専門型として筆記用具メーカー(Pirot、三菱鉛筆、ぺんてるなど)、オフィス家具メーカー(オカムラ、イトーキ、内田洋行など)、ファイルメーカー(キングジム、ナカバヤシ、リヒトラブなど)が存在しています。
下のグラフは、各社の最新の売上高になります。
総合型のメーカーが多くの売上を上げているほか、オフィス家具メーカーも売上を上げています。オフィス家具メーカーに関しては、オフィス家具に限らず様々な職場で家具を売っているということもあり売上高が高いようです。

文房具業界は、少子化・学校でのデジタル化の波により文具を利用する児童の数や機会が減っていること、また、オフィスにおいてもリモートワークの普及等が後押ししペーパーレス化の波が加速していることもあり、売上は減少傾向が続いていると言われています。各社は海外への販路拡大を求めたり、デジタル商品を開発するなど工夫して活路を模索しているようです。キングジムの有価証券報告書にも今後の展開について、海外への販路拡大、デジタル商品、ECサイトの強化が言及されています。

キングジム製品が愛される理由

このように文房具業界は縮小傾向にありますが、キングジムはたくさんのファンに愛されている企業です。それは、「多機能ではなく単機能」に着目した数々の商品や、「打率1割でもいいからホームランを狙え!」の精神で、かゆいところに手が届く商品を次々に世に送り出しているからに他なりません。思ってもみない方向から商品を繰り出してくるワクワク感をファンは期待しているのだと思います。

今後の展開としては、縮小が見込まれるファイル依存の収益構造からの脱却を図り、表示ニーズを観点とした「デザイン×デジタル」のサービス構築、グループ会社によるライフスタイル分野の拡大、海外事業の強化を掲げています。

株式会社キングジムH Pより

なくなることは考えられませんが、縮小を続ける文房具業界において、今まさに岐路に立たされているキングジムが、壁を乗り越え、今後どのように躍進をしていくのか注目していきたいところです。

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